インターネット接続機能を強化した多機能テレビ「スマートテレビ」のサービスが多様化している。今月にはパナソニックが新しいビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス対応のテレビを発売するなど、各社とも新機軸を打ち出して市場を盛り上げようと躍起だ。「スマートテレビ元年」(メーカー関係者)との声もある一方で、普及には冷ややかな見方もある。次世代テレビの“本命”ともいわれるスマートテレビが本格化するには何が必要か。
◆「もっとTV」初対応
「パソコンよりも操作が簡単で、操作スピードも速い。大画面のテレビも見られる『スマートフォン(高機能携帯電話)』という感覚だ」
パナソニックAVCネットワークス社映像ネットワーク事業グループの技術担当者は、今月から順次販売を始めたスマートテレビの新製品(50型で市場想定価格36万円前後)を前に胸を張る。
新製品は、民放5局などが4月2日に始めるVODサービス「もっとTV」に対応する業界初のモデル。番組視聴中に専用ボタンを押すと、見逃した過去の番組や関連番組をネット経由で視聴できる。このサービスに参加検討中のNHKの番組を合わせると、1万本超の豊富なコンテンツを有料で視聴できる。
このほかにも、最近のモデルで採用しているスマホへの番組送信や、スマホをリモコン代わりに使うなどの機能も付けた。
スマートテレビの定義は定まっていないが、一般的にネット接続などパソコンのような機能を持つテレビを指す。テレビ番組の視聴だけでなく、映画やゲームなどを購入したり、健康や教育など多様な情報サービスを受けたりできる。スマホやタブレット端末のようにソフトを追加して機能を拡張するなど、テレビを中心としたデジタル機器のネットワーク化を目指す。
実は、ネット接続できるテレビが登場したのは1990年代と古い。それは普及しなかったが、テレビメーカー各社が参加したVODサービス「アクトビラ」が始まった07年に第2期ともいえる時期を迎える。
ソニーは07年、テレビに自分専用アプリを設定できるサービスを始めたほか、10年10月には世界で初めて米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した「グーグルテレビ」を米国で発売した。パナソニックも08年、ネット通話ソフト「スカイプ」や動画投稿サイト「ユーチューブ」も閲覧できるテレビを発売するなどネット対応強化は進んできたが、いずれも普及には至っていない。
◆見えない赤字脱却
ここにきてスマートテレビが注目され始めたのは、スマホやタブレット端末が急速に普及しているためだ。それ以上に、テレビ販売が地上デジタル移行後に急減した上、価格低下も止まらず、メーカー各社のテレビ事業の赤字脱却の道筋が見えないことで各社が力を入れ始めたようだ。
米国ではテレビのネット接続率が約4割に達し、“スマート化”が進んでいる。普及を牽引(けんいん)したのがVODサービスで、AV評論家の麻倉怜士氏は「(オンラインDVDレンタルサービスの)『ネットフリックス』が月額9ドル(約750円)で映画やドラマ見放題というサービスを始め、ネット接続人口を爆発的に増やした」と説明する。パナソニックの担当者も米国にならい、「コンテンツ数もそろえた新サービスで購入の起爆剤につなげたい」と“第2のネットフリックス”を狙う。
ただ、コンテンツ拡充については、米国に比べ日本は著作権や肖像権管理が複雑で厳しいため、テレビ番組や映画などをサービスする“壁”は高い。スマホなどとの連携でも、新しい使い方をアピールできていない。
電子情報技術産業協会(JEITA)によると、昨年のテレビ国内出荷に占めるネット対応型の比率は6割近くに達するが、ネット接続は「操作が複雑で使ったことがない」という声がほとんど。それだけネット関連サービスに魅力がないことも事実で、「普及には時間がかかる」(業界関係者)との見方もある。
コンテンツの拡充だけでなく、いかにテレビを「使いこなす」提案ができるかがスマートテレビ普及の鍵を握りそうだ。(古川有希)
(この記事は経済総合(フジサンケイ ビジネスアイ)から引用させて頂きました)